祖母の家にあった火鉢
それは、祖母の家にあった火鉢です。
今のようにスイッチ一つですぐ暖かくなる暖房器具とは違います。火を起こし、その火を囲みながら、ゆっくりと暖を取る。
そこには単なる「暖房」という言葉だけでは表せない、昔ながらの風情がありました。
火鉢そのものの姿。炭火の温もり。火を囲む時間。そして、長い年月を経た道具だからこそ感じられる佇まい。
便利さや暖房能力だけを数字で比べれば、現代の暖房器具にはかなわない部分もあるでしょう。
それでも、火鉢には現代の暖房器具とは違う「何か」がありました。
火鉢→現代の暖房
そこで一つの疑問が生まれます。
もし、昔の火鉢が持っていた温もりや風情を現代の技術で受け継ぐとしたら、それはどんな暖房器具になるのでしょうか。
単に電気を使って部屋を暖めるだけではない。
火を眺める楽しさがあり、長く使いたくなる佇まいがあり、それでいて現代の暮らしに合った暖房。
そんな「火鉢→現代の暖房」と呼べるものを探してみたいと思います。
火鉢が担っていた5つの役割――最終候補
1.身体をじんわり暖める
火鉢は、部屋全体を一気に暖めるというより、火のそばにいる人へじんわりと暖かさを届けるものでした。現代暖房を探す際にも、この「身体で感じる暖かさ」を一つの基準にします。
2.人が自然と集まる場所をつくる
火のあるところへ人が寄り、そこで話をしたり、同じ時間を過ごしたりする。火鉢は暖房器具であると同時に、家族の居場所でもあったのだと思います。
3.五感に残る時間をつくる
炭の匂い、火の色、暖かさ、静かな気配。私自身、祖母の家の火鉢を思い出すと、温度ではなく、夕暮れの景色や炭の香りまで一緒によみがえります。便利さや暖房能力だけでは測れない部分です。
4.外の寒さと、家の暖かさを分ける
寒い外から帰って火のある場所へ入ったとき、「帰ってきた」と感じる。その境目を火鉢がつくっていたのではないでしょうか。暖房とは、単に室温を上げるものではなく、外の世界から家の時間へ気持ちを切り替える存在でもあります。
5.「ここにいていい」と感じられる居場所をつくる
これが、私にとって最も大きな役割です。火鉢の向こうには祖母がいて、そこには暖かさがありました。振り返れば、私が覚えているのは火鉢という道具そのものよりも、安心して腰を下ろせる場所がそこにあったことなのだと思います。
【火鉢の5つの役割ーー総括】
こうして振り返ってみると、火鉢が与えてくれたものは、単なる「暖かさ」だけではありませんでした。
身体を暖め、人が集まり、匂いや炎が記憶に残り、外から帰れば「家に帰ってきた」と感じる。そして最後には、「ここにいていい」と思える場所になる。
では、この五つの役割を、現代の暖房器具でどこまで取り戻すことができるのでしょうか。
昔の火鉢そのものに戻るのではありません。
火鉢が持っていた「火と暮らす豊かさ」を、現代の技術でつくり直す。
現代の火鉢候補① HONMA YSP-650
火鉢が持っていた「火と暮らす豊かさ」を現代の暖房に求めていくと、一つの候補として見えてきたのが、ホンマ製作所のペレットストーブ「YSP-650」です。
電気だけで部屋を暖めるのではなく、実際に燃料を燃やし、その火の暖かさを感じながら過ごす。そこには、昔の火鉢にも通じる「火のそばで過ごす時間」があります。
電気を使わず、ペレットの火で暖める
YSP-650の大きな特徴は、電気を使わずに木質ペレットを燃やして暖をとることです。
暖房面積の目安は15~20坪。ペレットは約3kg入り、消費量は1時間あたり約1~1.5kg、熱出力は5.8~7.0kWとされています。
私が今回の「現代の火鉢」という視点で注目したのは、単なる暖房能力だけではありません。
燃料を燃やし、そこに実際の火があること。そして、その火のそばで暖かさを感じながら時間を過ごすことです。
エアコンのようにスイッチ一つで部屋を暖める便利さとは違いますが、その分、「火と暮らす」という昔ながらの暖房の感覚に近いものがあります。
ただし、手軽な電気暖房と同じようには考えられません。YSP-650には薪ストーブと同様に煙突の設置が必要です。また、ストーブ本体は高温になるため、設置場所や周囲の可燃物にも十分な配慮が必要です。
だからこそ、このストーブは「誰にでも簡単におすすめできる暖房」というより、実際の火を生活の中に取り入れ、その手間も含めて楽しみたい人に向いた一台だと私は考えます。
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現代の火鉢候補② 山本製作所「ほのか」
HONMA YSP-650が、昔ながらの「火と暮らす」感覚を比較的素朴な形で残したペレットストーブだとすれば、もう一つ注目したいのが、山本製作所のペレットストーブ「ほのか」です。
「ほのか」は、火のある暮らしを現代の住宅に取り入れることを考えてつくられたFF式のペレットストーブです。高気密住宅にも対応し、暖房出力は1.9~5.5kW。使用環境によって異なりますが、暖房の目安は最大約14~23畳とされています。
私が特に興味を持ったのは、暖め方です。
火力が弱いP1・P2では温風ファンを使わず、自然対流によって静かに暖めます。一方、P3・P4では温風ファンを使って暖かい空気を送り出します。足元付近に温風吹出口が設けられているのも特徴です。
つまり、「ほのか」は単に部屋の温度を上げるだけではなく、炎を眺めながら静かな暖かさを感じる時間と、必要に応じてしっかり部屋を暖める機能の両方を考えた暖房器具といえます。
山本製作所が公式サイトで紹介している導入事例には、炎を眺めながら来客との会話を楽しんでいるという利用者の声もあります。ここには、私が火鉢について考えた「人が自然と集まる場所をつくる」という役割との共通点を感じます。
もちろん、「ほのか」も置くだけで使える暖房ではありません。100V電源や給排気設備、設置場所の条件などを確認する必要があります。本体上部や前面などは高温になるため、子どもやペットがいる家庭では安全柵などの対策も考える必要があります。
HONMA YSP-650が、火そのものと向き合う昔ながらの暖房に近い方向だとすれば、「ほのか」は、火のある暮らしを現代住宅の技術でつくり直した方向にあるペレットストーブだと私は感じました。
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HONMAと「ほのか」は、どんな人に向くのか
ここまで二つのペレットストーブを見てきましたが、どちらが優れているかを単純に決めることはできません。
大切なのは、火鉢が持っていた五つの役割のうち、自分は何を現代の暮らしに取り戻したいのかということです。
HONMA YSP-650は、電気を使わず、木質ペレットを燃やして暖をとる比較的シンプルなストーブです。煙突の設置などは必要ですが、実際の火と向き合い、その手間も含めて「火と暮らす」時間を楽しみたい人に向いているでしょう。
一方、山本製作所「ほのか」は、FF式を採用し、火力に応じて自然対流と温風を使い分けるなど、現代住宅での使いやすさを考えたペレットストーブです。
炎を眺める時間を楽しみながら、現代的な暖房機能も求めたい。家族や夫婦で過ごす冬の時間を、もう少し暖かなものにしたい。そんな人にとっては、「ほのか」が一つの候補になります。
つまり、
火そのものと付き合う暮らしを求めるなら、HONMA YSP-650。
現代の住まいの中に、炎のある時間を取り入れたいなら、「ほのか」。
これは「どちらが上か」という比較ではありません。
暖房器具を選ぶということは、価格や暖房能力だけを比べることではなく、自分が冬をどのように過ごしたいのかを考えることでもあるのだと思います。
まとめ|暖房を買うのではなく、冬の暮らしを選ぶ
この記事を書き始めたきっかけは、祖母の家にあった一つの火鉢でした。
夕暮れまで外で遊び、家へ戻ると火鉢がある。炭の匂いがあり、その向こうには祖母がいる。
振り返ってみれば、私が覚えているのは火鉢という道具そのものではありません。
身体をじんわり暖めること。人が自然と集まること。匂いや炎が記憶に残ること。寒い外から暖かな家へ気持ちを切り替えられること。そして、「ここにいていい」と感じられる場所があること。
それが、私にとっての火鉢だったのだと思います。
もちろん、現代の暮らしを昔の火鉢の時代へ戻す必要はありません。
HONMA YSP-650のように、実際の火と向き合いながら暖をとる方法もあります。「ほのか」のように、現代住宅の技術の中へ炎のある時間を取り入れる方法もあります。
大切なのは、昔と同じ暖房器具を探すことではなく、昔の暖房が私たちに与えてくれたものを、今の暮らしの中でどう取り戻すかではないでしょうか。
暖房器具の性能は、数字で比較できます。
しかし、その暖房の前でどんな時間を過ごすのかは、数字だけでは決められません。
だから私は、現代の暖房を選ぶときの答えの一つは、**「体感すること」**にあると思います。
そして最後に選ぶのは、暖房器具そのものだけではありません。
暖房を買うのではなく、「どんな冬の暮らしをつくりたいか」を選ぶ。
祖母の火鉢を思い出しながら現代の暖房を探してみて、私はそこへたどり着きました。


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